この記事は 半導体・ハードウェア開発 Advent Calendar 2017 - Qiita の1日目の記事です。
Advent-Calendarを埋めてくれるかた、今からでも募集中です!是非参加してください! 私一人では、クオリティのある記事を続けられそうにありません。。。(弱音)
2017年の半導体業界についてまとめる、などとたいそうなことを宣言してみたが、とりあえず私の注目した技術や事柄についてまとめてみようと思う。
2017年の半導体は、機械学習を中心に動いたといっても過言ではないと思う。
各社続々と機械学習専用チップを開発~AIに踊らされ続ける半導体業界~
あまりキチンとまとめていないが、大き目のところから見ていこう。各社が次々と機械学習専用チップを開発している。
まさに、サーバ用途からエッジのモバイル向けプロセッサまで、猫も杓子も機械学習、という感じだ。 今ここで乗り遅れるともうついて行けなくなる、という危機感を感じる。
- 5月、Googleがディープラーニングに特化した専用ハードウェアTPU(Tensor Processing Unit)の存在を公表。またTPU2の存在も公表した。
- 5月、NVIDIAがディープラーニング専用ハードウェアを搭載したGPGPU "Volta" を発表した。
- 10月、11月、Appleがディープラーニング用のハードウェアを搭載した新SoC "A11 Bionic" を搭載したスマートフォン iPhone X, iPhone 8を発売した。
- 7月、IntelがUSBタイプのディープラーニングハードウェア "Movidius Neural Computing Stick" を発売
- 7月、富士通が独自のディープラーニング専用ハードウェアを搭載した"Deep Learning Unit(DLU)"を発表
- 年内に、Intelがニューラルネットワークに特化したプロセッサ"Nervana"を発売すると発表。
- 6月、AMDのGPU Vega を発表、ディープラーニングに最適化するために16ビット浮動小数点演算をサポート。
- 11月、ARMがAI開発専門のグループを設立。
半導体業界全体での、ニュース記事の分布
「コンピュータアーキテクチャの話」などを手掛けるHisa Ando氏が毎週更新している "Ando's Processor Information Page"が、毎週の半導体関連のニュースをうまくまとめていて非常に役に立つ。 ここでは少し偏った味方になるかもしれないが、氏がこの一年間で記事として取り上げた半導体のニュースについて、分野毎にどのような傾向があるか見てみよう。
- Ando's Microprocessor Information Ando's Microprocessor Information
HPC関連が多く、やはりAI関連は非常に多いものになっている。まあ氏はSC(スーパーコンピュータの学会)などにも精力的に参加して記事を書いているようだし、 逆に言うと組み込み向けはあまり得意じゃなさそうだからかなり偏りはあるだろうが。 HPCは今AIと結びついて活気が戻りつつあると考えればよいのだろうか。シミュレーションなどで力を発揮しそうである。
自動車ブームは一旦収束?
AIブームに乗っているのか、はたまた正直どうでも良くなってしまったのか、あまり自動車関係の半導体については今年は聞く機会が少なかった。
自動運転と言っても結局はAIに行きついているし、やはり自動車などのリスクの高い分野には参入したくないというのが本音だったのか、セーフティ・セキュリティなどについても最近はあまり議論がされなくなってきている(それよりもAI、ってこと何だろうか)。
2015年、2016年ほどの買収劇は一旦収束
2015年、2016年は半導体業界で買収が相次いだ年であったと思う。 私も去年は以下の記事を書いてその傾向を振り返っていた。
一方で、今年はさすがに半導体企業の買収は少なくなった。 やっと落ち着いたというべきか、次の一手を探りに行っているのか、まだ分からないところではある。
AIブームに乗って勝ち残るのは誰か
半導体業界は浮き沈みが激しく、ターゲットのアプリケーションを見つけると一気にその分野に傾いて、専用プロセッサやASICを作り始める傾向にあるように思う。
今がまさにその時。AI、機械学習というターゲットを見つけた半導体業界は、計算能力を上げるために演算器を大量につぎ込むみ、チップ面積をどんどん大きくしている。
チップ面積を小さくすることでメリットの生じる半導体業界だが、チップ面積を維持し、逆に大きくすることで得られるメリットもある。 今、大量の演算器をつぎ込み、とにかく1チップで最大の演算能力を発揮することが、AIブームで生き残る唯一の手段なのだろう。
このAIブームに乗り、今まさに絶好調のなのが「謎の半導体企業」NVIDIAだったりする。2016年に発表したPascal P100、2017年に発表したVolta V100と、どんどんチップ面積を大きくしていき、 AIに舵を切って、順風満帆といったところだ。
しかし後続も黙ってはいない。 AIブームに続けと、主要半導体メーカはAI向けのチップを次々と開発している。 主要半導体メーカどころか、かつてのソフトウェアベンダまでもが半導体を開発し始めたというのが、まさに今年の半導体を一言で表しているのではないだろうか。
チップに目を向けるな、そのうえで動くプラットフォームを狙え
そして重要なのは半導体を作る事ではない。最も大事なのは、半導体の上で動くソフトウェア、プラットフォームだ。
機械学習が爆発的に普及するきっかけになった一つの出来事として、Googleから機械学習のプラットフォームであるTensorFlowがリリースされたということが挙げられると思う。 それ以来、ほとんどの機械学習の話題、アプリケーションはTensorFlowを中心に動いている。
TensorFlowはハードウェアの垣根を超えている。x86でも動くし、GPGPUでも動く。いろんな専用ハードウェアに移植もされるだろう。
どんなハードウェアでも動くプラットフォームを取ったもの勝ちではないだろうか。
チップを作るのは、そのうえで動く機械学習アプリケーションを考えるのよりも簡単ではないだろう。でも、そこばかり見ていてもあまり恩恵は無いようにに思える。