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FPGA開発日記

FPGAというより、コンピュータアーキテクチャかもね! カテゴリ別記事インデックス https://sites.google.com/site/fpgadevelopindex/

RISC-Vについて改めて

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この記事は ハードウェア開発、CPUアーキテクチャ Advent Calendar 2016 - Qiita の1日目の記事です。

Advent-Calendarを埋めてくれるかた、今からでも募集中です!是非参加してください! 僕一人では、クオリティのある記事を続けられそうにありません。。。(弱音)

という訳で、私は今年一年で急激に注目を浴び始めたRISC-Vについて、あらためて纏めていこうと思う。

「改めて」と書いてあるとおり、私が一番最初に紹介したRISC-Vの記事は以下なので、こっちも参照してね。

msyksphinz.hatenablog.com

RISC-Vの生い立ち

今でこそ随分と知名度を得たRISC-Vだがが、私が一番最初に発見した日本語の記事は、以下と記憶している。

keisanki.at.webry.info

この記事を見て、「面白そう!」と思ったので、自分で調べながら記事を書き始めたのが最初。

さらに言うならば、2013年のHot-chipsにて以下のポスターセッションがあったようだ。

さらに、初期のRISC-Vの命令セットリファレンスマニュアルを見ていると、2011年という記述が出ており、ずいぶんと昔から検討されていたアーキテクチャなのだなということが分かる。

RISC-Vの目的

RISC-Vの目的とはいったい何なのだろうか?

まずはRISC-VのISA仕様書を読んでみよう。Introductionに(仕様書とは思えないような)設計者の思いが書いてある。

We developed RISC-V to support our own needs in research and education, where our group is particularly interested in actual hardware implementations of research ideas (we have completed eleven different silicon fabrications of RISC-V since the first edition of this specification), and in providing real implementations for students to explore in classes (RISC-V processor RTL designs have been used in multiple undergraduate and graduate classes at Berkeley).

まずは、RISC-Vの設計者とMIPSの設計者が同じ流れを組んでいることから分かる通り、過去の遺産を大量に抱えているMIPSアーキテクチャから決別した、新しいアーキテクチャが必要だったということだ。 プロセッサアーキテクチャを研究する人達は、自分の提案手法の効果を測定するためのリファレンスプロセッサモデルが必要だったのではないか?しかし、

  • リファレンスモデルとしてMIPSは過去の古い資産を含み過ぎている(遅延スロット、複雑な命令、複雑なレジスタ構成HI/LOなど)
  • 他のプロセッサアーキテクチャも、ライセンスなどの問題で自由に使えるものがあまり無い(ARMも大学の研究として使うのは難しく、またARM32のアーキテクチャRISCと呼ぶにはあまりにも複雑だった。ARM64は知らない)

ということから、誰もが自由に使用することができる、新しいデファクトスタンダードとしてのプロセッサアーキテクチャが必要だったという訳だ。最初は別に産業界に普及して欲しいとか、そういうことは考えていなかったのではなかろうか。

RISC-Vの特徴

上記のとおり、RISC-Vは過去のMIPSという古いアーキテクチャの問題点を解決するように設計されている。最初の目的がMIPSの改善ということもあり、MIPSの問題点を解決すべく設計されているような印象だ。

  • 遅延スロットは存在しない
  • 命令セットは単純
  • フラグは存在しない
  • HI/LOレジスタは存在しない
  • 命令セットはより単純に

アーキテクチャレベルについて

RISC-Vにはいくつかのアーキテクチャレベルが存在する。整数、浮動小数点のアーキテクチャセットの区別はもちろん(RV32I, RV32-Fみたいな)、 64ビット整数命令、64ビット倍精度浮動小数点命令、さらには128ビット整数命令まで定義されている。

RISC-V Spec 2.1を改めて読み直すと、いろいろアーキテクチャレベルが追記されている。

Specifications - RISC-V Foundation

名称 内容 備考
RV32I base integer instruction set
RV32E base integer instruction set, which is a reduced version of RV32I designed for embedded systems
RV64I base integer instruction set, which builds upon the RV32I.
"M" Standard Extension standard integer multiplication and division instruction extension
"A" Standard Extension standard atomic instruction extension.
"F" Standard Extension standard instruction-set extension for single-precision floating-point.
"D" Standard Extension standard double-precision floating-point instruction-set extension.
"Q" Standard Extension standard extension for 128-bit binary floating-point instructions.
"L" Standard Extension support decimal floating-point arithmetic まだ詳細は定義されていないが。
"C" Standard Extension draft proposal for the RISC-V standard compressed instruction. RV32Eよりもより小さくした命令セットかな。
"V" Standard Extension vector instructions. まだ定義されていない。
"B" Standard Extension future standard extension to provide bit manipulation instructions まだ定義されていない。
"T" Standard Extension transactional memory operations. まだ定義されていない。
"P" Standard Extension standard packed-SIMD extension for RISC-V 命令セットの空間だけは予約してある?
RV128I variant of the RISC-V ISA supporting a flat 128-bit address space

ちなみに、システムレベル命令(システムコールとか、割り込み)などは別の仕様書に定義されている。

Draft Privileged ISA Specification v1.9.1 - RISC-V Foundation

備考: OpenRISCじゃ駄目なのかい?

これもアーキテクチャ仕様書に言及がある。OpenRISCにはOpenRISCの問題点が残っている訳だ。

  • OpenRISC has condition codes and branch delay slots, which complicate higher performance implementations.
  • OpenRISC uses a fixed 32-bit encoding and 16-bit immediates, which precludes a denser instruction encoding and limits space for later expansion of the ISA.
  • OpenRISC does not support the 2008 revision to the IEEE 754 floating-point standard.
  • The OpenRISC 64-bit design had not been completed when we began.

上記の資料を読めば分かるように、RISC-Vのアーキテクチャ仕様書を見て分かるとおり、命令エンコーディングについてはかなり工夫がされている。 最初にアーキ仕様書を読んだ人はびっくりするかもしれない。

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RISC-Vの即値生成は、他の命令の即値フィールドと合わせるためにこのようなビットフィールドになっている。これにより即値生成の回路を単純化するという目的がある。

手っ取り早くRISC-Vを試したい方へ

Zynq ZedBoard, Zybo, ZC702を持っている方は、RISC-Vの実装を手っ取り早く構築し、Linuxを起動させるデモがある。

ビルドの方法は、私の過去の記事を参照して欲しい。

msyksphinz.hatenablog.com

RISC-V Workshop

RISC-Vは定期的にワークショップを開催しており、徐々にその規模は拡大しているように感じる。

  • 2015/01/14-15 : RISC-V 1st Workshop at Marriott Hotel, Monterey
    • 最初のワークショップは殆どがUC Berkeleyの発表であり、かなりの部分をRISC-Vプラットフォームの説明、仕様書の説明に裂いてある。
  • 2015/06/29-30 : RISC-V 2nd Workshop at The International House, Berkeley
  • 2016/01/05-06 : RISC-V 3rd Workshop at Oracle Conference Center
  • 2016/06/12-13 : RISC-V 4th Workshop at MIT
  • 2016/11/29-30 : RISC-V 5th Workshop at Mountain View Google

私の知っている限りのRISC-Vの学会発表

ちょっとフォローし切れていないけど。。。

  • 2013 Hot-chipsにてRISC-Vのポスター設置
  • 2014 ESSCIRC-2014 にてRISC-Vを用いたシステム発表
  • 2014 August, EETimesにRISC-Vの記事が登場
  • 2015 HPCA 2015にてRISC-Vのチュートリアル実施
  • 2015 Hot-chipsにてRISC-Vの実装Ravenの発表

次回

明日は、RISC-Vの様々な実装について紹介していきたい。