この記事は 技術翻訳 Advent Calendar 2016 - Qiita の4日目の記事です。
突然の参加ですが、趣味で技術翻訳を長年続けてきた立場から、思うことやこれから技術翻訳を行う人にアドバイスが出来たらなと思う。
- 1. これまで翻訳してきた技術書
- 2. 何故そんなにたくさん技術書の翻訳に取り組んだの?殆ど公開してないし、何のために翻訳したの?
- 3. 長い量の翻訳を継続するために自分が工夫したこと
- 4. 終わりに
1. これまで翻訳してきた技術書
突然だけど、私はこれまで趣味で結構な技術書を翻訳してきた。大学生の頃に趣味で始め、就職してからも毎日の朝と夜に時間を見付けて翻訳をしていた。これまでに翻訳した技術書をざっと振り替えってみようと思う。
2011年-2012年
- Computer Arithmetic: Algorithms and Hardware Designs (翻訳成果未公開)
- 作者: Behrooz Parhami
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand
- 発売日: 2009/10/28
- メディア: ハードカバー
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始めて翻訳に挑戦した本。実に600ページ程度ある。とりあえず全体を翻訳するのに、おおよそ1年かかった。
2013年-2014年
- Principles and Practices of Interconnection Networks (翻訳成果未公開)
- 作者: William James Dally,Brian Patrick Towles
- 出版社/メーカー: Morgan Kaufmann
- 発売日: 2004/03/06
- メディア: Kindle版
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- Handbook of Floating Point Arithmetic (翻訳成果未公開)
Handbook of Floating-Point Arithmetic
- 作者: Jean-Michel Muller
- 出版社/メーカー: Birkhäuser
- 発売日: 2013/04/11
- メディア: Kindle版
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上記の2冊は途中まで翻訳したのだが、途中で面白くなくなって止めてしまった。
2014年-2015年
- Superscalar Microprocessor Design (翻訳成果未公開)
Superscalar Microprocessors Design (Prentice Hall Series in Innovative Technology)
- 作者: William M. Johnson
- 出版社/メーカー: Prentice Hall
- 発売日: 1990/12/01
- メディア: ペーパーバック
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既に日本語版が出ていのだが、入手困難になっていた。そこで自分で翻訳することにした。
2016年
- xv6. a simple, Unix-like teaching operating system (翻訳成果公開済)
https://pdos.csail.mit.edu/6.828/2012/xv6/book-rev7.pdf
有名なMITのオペレーティングシステムに関する教科書。オペレーティングシステムについての理解を深めるために翻訳した。翻訳成果公開済。ただしクオリティはヒドい。
GitHub - msyksphinz/xv6_translate: translation of XV6
- Understanding the detailed Architecture of AMD's 64 bit Core (翻訳成果公開済)
http://chip-architect.com/news/2003_09_21_Detailed_Architecture_of_AMDs_64bit_Core.html
ハイパフォーマンス向けのCPUに関する技術書。現代のプロセッサの、高速化のための応用技術が紹介されている。翻訳成果公開済。ただしクオリティはヒドい。
2. 何故そんなにたくさん技術書の翻訳に取り組んだの?殆ど公開してないし、何のために翻訳したの?
本来そうあってはいけないのだけど、英語の翻訳というのは、ともすれば単純作業のように、英語を読んでそれを日本語に変える作業と考えることができる。
そうすると、翻訳作業というのはかなりの単純作業で、前後の文脈を考えずに実行することだって可能なのだ。普段エンジニアをしている私にとって、あまり頭脳労働でない翻訳作業は、ちょっとした休憩のようなものになってしまっていた。(本来はそうあるべきでは無いんです!翻訳のプロの皆さん、ゴメンなさい!!)
昔からの性格か、朝晩の単純作業というのは比較的得意で、いつの間にか長年続けることが出来るようになってしまっていた。これは良い点もあれば悪い点もあり、結果としていくつかの技術書については翻訳を完了できたし、 成果を公開することが出来た。ただし、プロでは無いし、プロ意識も無いまま翻訳してしまったので、クオリティはヒドいものになっているという弱点がある。
3. 長い量の翻訳を継続するために自分が工夫したこと
ここからは、600ページにも及ぶ技術書をひたすら翻訳するために自分が工夫した点を挙げてみる。継続するための工夫はもちろん行っており、いろんな方法を取った。
進捗管理をする。サブ目標を立てる
僕は翻訳の進捗管理を、プロジェクト管理ツールを使って実施していた。僕の場合はRedmineを使い、各章、各節毎にチケットを作成し、締切を決めて実施していた。
細かなマイルストーンを決めて、進捗管理することは、途中でダれてしまいがちな一人プロジェクトではとても重要なことだと思う。そこはいつも気を付けるようにしている。
なるべく成果を公開することを心掛けて(なので技術書ではなくOSSの資料を翻訳すべき)
人は成果が公開出来たほうがうれしいものです。なので、私のように全部翻訳が完了しても公開出来ない技術書を翻訳するよりも、成果が公開できるオープンソースの資料を狙って翻訳すべきですね!
自分の興味のあるものなら何でも!とにかく、自分の興味のある分野や、ある程度知識のある分野が重要。いきなり張り切って全くの門外漢の洋書を読んでも、途中で諦めてしまうのは目に見えている。
翻訳クオリティを上げるために、前後の文脈を考えて。作業になってしまわないように
翻訳クオリティを上げるために、というか、逆に何故個人が趣味で翻訳をするとクオリティが下がってしまうのだろう?ということを考えたときに、やはり前後の文脈を考えず、一文一文を独立に翻訳してしまいがちな傾向があるのでは無いだろうか?(少なくとも僕はそう)。
これを防ぐためには、
- 一文単位で翻訳はしない。
- 少なくとも段落は全部読んでから、翻訳する
- (めっちゃ時間に余裕があれば)まず全体を読んでから翻訳、そうでなければ一章か一節読んでから翻訳が望ましい。そのためには、英文で2文になっているものを日本語で1文にしてしまっても構わない。
段落の内容をキチんと把握するために
では、段落の内容をキチんと把握し、綺麗な日本語に変換するためにはどうしたら良いのだろう? 僕のおすすめの方法は、技術書の洋書に多い、端の余白に、まとめを記入していく事だ。
手書きで良いので、きちんと日本語に起こすこと。そして、はやまって急に翻訳文章にしてしまわないこと、これが大切だと思う。
4. 終わりに
- 翻訳は、一度起動にのれば、楽しい趣味にできる。
- 継続するためには、細かく進捗管理する。そして自分を律すること(ある程度ね)。
- 一文一文の直訳は禁物!せめて段落は読んで、分かりやすい日本語を心掛ける。
以上、エンジョイ翻訳ライフ!
さて、来年は何を翻訳しようかなー。